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    チロルのこと

    8年間我が家にいてくれた、犬の「チロル」が旅たちました。

    チロルを迎えるまでのこと

    子どものトラブルをきっかけに犬を飼うことを決めた

    長女が小学生の時、友達とペットをめぐる盛大なトラブルが発生し、しばらく学校に行けなくなった時期がありました。どん底に暗くなってしまった家庭を明るくしたいと悩んだ結果、ペットを迎えて皆んなで立ち直ることを決意。

    子ども3人をワンオペでみるだけでも大変なのに、ペットなんて絶対無理と長年思っていましたが、新しい挑戦をしようと腹をくくりました。

    命を引き受けるからには、言い出しっぺの私が最後まで責任を取る。誰かに手伝ってもらうことはあっても、最終的には自分が全部を受け止めると密かに心に決めていました。

    その時思っていたのは、こんなこと。

    • 老衰した時、ひとりで抱えて看病できるように、小型犬のみ検討する。
    • 医療、エサ、最低限にかかるコストを払えるくらいは責任もって仕事を続ける。
    • 散歩や世話は、家族にも手伝ってもらうけど、あてにしすぎない。誰もやらなかったら私がやる。

    和歌山の動物保護団体「ワンライフ」から犬をもらう

    ペットショップ業界はいろいろと闇が深いと見聞きしていたので、犬を飼うなら保護犬を迎えようと考えていました。

    子どもたちにどんな犬を迎えたいか?希望を聞いたところ、チワワがいい!と全員一致。チワワがすごく好きというよりも、チワワしか知らなかったのが実際のところだったと思いますw

    そこで、チワワの保護犬をネットで調べていると、和歌山の保護団体「ワンライフ」さんがヒットしたので、連絡をとりました。

    代表者さんからすぐに電話を頂き、言われたことは

    「チワワが気が強いので、子ども3人いて賑やかな環境だと、子どもたちとケンカするかもしれない。もっと穏やかな性格の犬がいるので、その子を紹介させてくれないか?」

    犬にも性格があるって認識がなかったのでビックリ!!

    小さい犬なら何でも良いと思ってたので、そのオススメの犬をお願いすることにしました。その時やってきたのが、チロルです。

    6歳になるミニチュアダックスのオスで、前オーナーが飼育できなくなったという理由で保護されたそう。

    ワンライフさんがある和歌山県白浜町から、我が家まで実に車で3時間以上。遠路はるばる、チロルがやってきました。

    わざわざ送り届けてくださるのは、保護犬の飼育環境をチェックする理由もあります。犬を幸せにできる家族と環境が用意されているのか、見極めてから譲渡していらっしゃるそうです。

    チロルを迎えてからやったこと

    こうしてチロルを迎えて、我が家の生活は急激に変化していきました。

    家の改装

    リビング横にあった和室をチロルの部屋にしようと思い、サークルを置いて、トイレを置いて、これで完璧!と思ってたんですが

    なかなかトイレを覚えてくれず、畳はオシッコだらけに。毎日拭き掃除をするものの、染み込んだ汚れやニオイは全く取れず…和室はペット飼育に不適切だと思い知りました。今考えたら当たり前なんですが、当時はそんな事も知らなかった。

    仕方なく、大工さんにリフォームに入ってもらい、畳からフローリングに変えました。

    他にも、毎日のお世話をなるべく楽にしようと思ったら、改装が必要な箇所はいっぱいありました。

    • 庭の柵から飛び出していきそうだったので、生垣を切って細かいフェンスつける
    • 掃き出し窓から庭へ飛び降り・飛び乗りして怪我しそうなので、スロープを設置
    • ソファーやベッドから飛び降りるので室内階段を設置

    住環境の整備は、思っていた5倍くらい大変だしお金もかかりました。

    医療

    動物病院は全額自費です。もし病気や怪我をした時、どれだけお金がかかるのか分からず不安でした。

    ペット保険は入る人・入らない人、かなり分かれるようだとは聞きましたが、私はフリーランスで収入が不安定だったこともあり、念のため入っておこうと思いました。

    ネットでサクッと調べて出てきた「猫のきもち・犬のきもち保険」というのに加入。今はサービス名が変わり「アクサダイレクトのペット保険」という名称になっています。

    私が入ったプランは、動物病院にかかると費用の50%を払ってもらえるもので、年5万円くらいの掛け捨て。8歳を超えると加入できないため、早めに入っておいて良かったと思います。

    ペット保険の必要性は悩むところですが、我が家の場合、チロルが癌になってからの医療費が非常に高かったので、結果的にすごく助かりました。

    日常のケア

    普段、チロルは家の中を自由にウロウロしていました。張り切って大型犬用のサークル買って置いてたものの、チロルは嫌がって入らなかったので、すぐ物置になってました。

    キッチンやストーブの前は近づくと危ないので、小さな柵を置いて防御。床は、子どもたちのためにコルクタイルを施工していたのですが、触りがやわらかく滑らないため、犬のためにも良かったと思います。

    シャンプーを2ヶ月なんとかやっていましたが、乾かすのが大変なのと浴室が毛だらけになるため、早々にあきらめて、近くのトリミングサロン「クウネル」さんに連れていってました。

    お金はかかりますが、ふわっふわでいい匂いになって帰ってきますし(自分で洗ってもこうならないのはなぜ???)、爪切りや肛門腺しぼり、体重測定もやってもらえるので、すごく助かりました。

    トリミングしてもらってさっぱりしたところ

    何年もずっとお世話になっていた事もあり、チロルに何か変化があれば教えてもらえることが、健康観察にもつながります。

    あとで書きますが、癌を見つけることが出来たのも、トリマーさんの何気ない一言がきっかけでした。

    チロルとの生活・思い出

    食べ物が大好き

    チロルはとにかく、食欲が旺盛でした。
    食べ物を見ると何でも欲しがり、家族が食事をしていると、ずっと机の下に座って何か落ちてくるのを待ってました。

    特にホットケーキが大好きで、ホットケーキの匂いがすると、どれだけでも欲しがって吠えてたことをよく思い出します。

    可愛くて、家族みんなでおやつあげすぎてしまったことで、あっという間に肥満になってしまい…体が重くて歩きづらそうな姿を見て反省。獣医さんとも相談して、カロリーが高すぎないエサを・量を管理してあげるようにしました。

    家族が好き、穏やかで明るい性格

    性格が良い、というお墨付きをもらってやって来た子なのもあり、本当に穏やかで明るい性格の犬だったと思います。

    誰でも構ってもらうと喜ぶし、必要以上に吠えたりもせず、基本的にいつもおとなしくしていました。

    家族が大好きで、特に長男を慕っていたので、長男の横で寝たりくつろいだりしていました。誰かが服を脱いで置いておくと、かならずそこで寝る習性もありました。家族の匂いで安心するのでしょうか。

    反面、他の犬はすごく苦手で、近くに犬が寄ってくると怖がって威嚇してました。最初、チロルが喜ぶのではと思ってドッグランに連れて行ったこともありましたが、シンプルに嫌そうなので、行かなくなりました。

    もしかすると、自分を犬だと思ってなかった可能性があります。

    旅行

    我が家は家族旅行が好きなので、年に何回か長期の旅行に出かけるんですが、そんなときは獣医さんか、いつものトリマーさんに預けるようにしていました。

    でも、たまにはチロルも連れていってあげたい。特に子どもたちは、留守番してるチロルをとても気の毒に思っていたので、たまにはペット連れの旅行もしました。

    チロル自身は、長距離の移動はそんなに好きそうじゃ無かったけど、いつもと違う場所に連れていって、いろんな景色を見せたり・思いっきり遊ばせてあげられたのは、家族みんな嬉しいし良い思い出になりました。

    白浜旅行

    ペットを連れての旅行、できる時に行っておくほうがいいなと思いました。ペットが高齢になると負担になりますし、それは人間だって同じで。それに、この2年間の世の中を振り返っても、いつ何が起こるか誰にもわからないのだから、行きたい場所には行ける時に行っておくの大事。

    自分で探してみて初めて知りましたが、ペットOKの交通手段や宿泊先ってそれほど選択肢は多くなく、料金もすごく高いんです。

    ペットと一緒のお出かけ情報は、友達のけいちゃんが「おでかけわんこ部」という情報メディアをやっているので、よかったらチェックしてみてください。

    病気のこと

    きっかけ

    1年前のこと。いつものトリマーさんにチロルのカットをお願いしてお迎えに行くと「最近、肛門線がかたく腫れていて絞りにくくなってます」と言われました。

    何が原因かわからないけど、一度、病院で見てもらおうと獣医さんのところに行くと「もしかしたら悪い腫瘍の可能性がある」と言われてビックリ。

    箕面市・桜井にある、動物の癌治療を専門とされている「山本動物病院」を紹介されて受診しました。

    大阪府箕面市の【山本動物病院】犬・猫の腫瘍・リンパ腫・腫瘍科認定医
    〒562-0043 大阪府箕面市桜井1丁目22-24ドルチェ桜井1F
    072-725-1818

    ガン発覚

    結果、チロルのしこりは「肛門腺癌」だと分かり、かなり進行して大きな腫瘍になっている事を知りました。

    検査の結果、他の臓器に移転はしてなさそうなものの、このままだと時間の問題で、早く手術をしないといつ亡くなってもおかしくない、という診断でした。

    手術

    あまりの急展開に気持ちがついていかなかったけど、すぐに手術の予約をして、腫瘍を取ってもらうことにしました。

    4時間ほどかかる大きな手術だったそうで、腫瘍を完全に取ることは出来ず、残りが広がらないように抗がん剤で継続して治療することに。

    1週間ほどで退院しましたが、お尻の大きな傷跡が痛々しかったです。

    通院、投薬

    退院してからがマジで大変でした。

    肛門のまわりをぐるっと切除しているため、排便障害が残り、ウンチが垂れ流し状態になりました。ひどい下痢もしていたので、床がすごいことに。。

    仕方ないのでオムツをさせるものの、嫌がってすぐ脱いでしまう、涙。嫌がるチロルを捕まえてオムツを替えるのを1日8回くらいやってたので、あっという間に手はボロボロ、腰も痛い。
    そういえば、子どもたちが小さいときも、こんな風に苦労してオムツ替えをしてたよなと思い出しました。

    取り替えるのはオムツだけじゃありません。床もソファーもベッドも、チロルが行きたがる場所すべてにカバーをかけて、汚れたら洗濯して交換するタスクが発生したので、こっちも大変。

    サークルに入れておこうとも思ったんですが、ずっと家の中を自由に歩き回っていたので、ものすごく嫌がるから、かわいそうでできない。

    抗がん剤、炎症を抑える薬、吐き気止め…毎日3〜4種類の薬を飲んで、副作用でぐったりしてる時期もあり、犬にとって何が幸せなのか悩む事も多かったです。

    安定と下降

    ずっと壮絶に調子が悪かった訳ではなく、手術から半年が経つと、容体が安定して元気になる時期もありました。

    そんな時は、いつもの陽気で楽しい犬に戻ってくれました。
    食べ物の好き嫌いが出てきたり、寝てる時間は多くなったものの、チロルの元気な姿を見れるのは本当に嬉しかったです。

    ただ、それも長くは続かず、しばらくするとまたガクッと悪くなる時期がやってきます。
    そんな感じで安定と下降を繰り返すのですが、前よりも良くなることは、残念ながらありませんでした。

    末期

    もう先は長くないと言われながらも、1年が経った2022年1月の終わり。とうとう、チロルが全くご飯を食べなくなりました。歩くのも辛そうで、もう脚で体を支える元気もなさそう。

    私が夜中に仕事をしていたら、そっと近寄って来て、少し離れたところからこっちをじっと見ていた事がありました。

    今までそんな事なかったので、何を伝えたいのか分からなかったんですが、しんどいのかな?不安なのかな?と思って、毛布で包んで膝に抱えていると寝てしまいました。

    なんだか子どもたちが赤ちゃんの時みたいだと思いました。

    最後の時

    ご飯を食べず・水も飲まなくなったので、毎日病院に通って点滴をしてもらう生活が1週間ほど続きました。

    よくこれで生きれるものだと思いますが、ヨロヨロと自分で歩いて、家族が食べているものに興味を示したりしてました(でも食べない)

    年末からずっと家にいた長女を下宿先に送って帰ってくると、チロルがグッタリしていて、目の焦点が合いづらくなっていました。
    抱えようとすると、どこか痛いみたいで、ちょっと怒ったりもします。
    病院につれていくと、貧血がひどいため点滴は中止、追加で痛み止めの薬をもらいました。

    夜遅くにお風呂に入っていると、ワンワン、ってなんかチロルが吠えてる。慌てて上がって、体をさすってあげて話しかけました。

    大丈夫だよ、お母さんがいるよ。1年間よくがんばった、もうゆっくりしていいんだよ。

    そんなことが3回くらい続いて(完全に湯冷めした)朝4時くらいになると、吠えなくなってきたので、私も布団に入りました。

    朝5時半頃、出勤のため起きた夫が、チロルが亡くなっているのを発見して、起こしてくれました。
    まだ体が暖かかったので、ついさっきまで生きていたのだと思います。

    亡くなってからのこと

    飼い犬を亡くすのは初めてのことだったので、少し前から、いざという時どうしたらいいのか、いろいろと考えていました。

    大切な家族が亡くなった後のことを、先立って考えておくことに非常に抵抗がありました。(いわゆる、縁起でもない、というやつ)

    でも、心構えなくその日を迎えると、誰しも動揺して適切な行動を取れない。後悔なく見送ることができないという話を聞く機会があり、考えが変わりました。

    チロルを連れて来たのは私なのだから、最後までしっかり見届ける責任がある。覚悟しよう、と思いました。

    用意したもの

    段ボールの棺

    葬儀場にいくまでの間、なるべく良い環境で過ごさせてあげたいと考えてAmazonで購入。

    https://www.amazon.co.jp/gp/product/B08DCLT9Q8/ref=ppx_yo_dt_b_asin_title_o03_s00?ie=UTF8&th=1

    ドライアイス

    家に置いておく間、遺体を保護するため。うちの近所では、池田の氷屋さんで購入できることを知りました。4キロほど購入、1200円。電話で問い合わせると、すごく親切に対応してくださいました。

    蛭田商店
    〒563-0032 大阪府池田市石橋4丁目17−13
    072-761-3876

    お花

    お花屋さんにいく時間の余裕がなく、スーパーで菊を大量購入。3000円分くらい買ったかも。
    棺をいっぱいにするくらいはできました。

    おやつ

    いちばん大好きだった、犬用のおやつパンを購入。
    長女と次女がイチゴ入りのクレープを焼いてくれたので、いっしょにお供えしました。

    骨壷

    起業家の先輩、アベチカさんがプロデュースしている「Amoflor」というペットの骨壷があります。チロルの具合が悪くなりかけていた頃から気になっていました。
    こんな素敵なかたちで、チロルをそばに置いておけたら素敵だと思ってオーダーしました。
    注文生産のため、納品まで1ヶ月必要です。

    最後のお別れ

    近くでペットの火葬をお願いできるところを探して電話すると、翌日の10時から対応できるとの事でした。
    私も旦那さんも、子どもたちも、みんなで休みをとってチロルを見送ることに。

    段ボールの棺にいれたチロルを連れて行くと、すぐに祭壇の前で焼香をして、それがチロルの姿を見る最後になりました。

    1時間半後、骨になったチロルをみんなで囲んで、ひとつひとつ骨壷に移していくと、本当に死んでしまったんだなと実感が湧いてきます。
    骨壷を長男が大事に大事に抱えて歩いてくれて、みんなで家に帰ってきました。

    子どもたちに話したこと

    チロルがいてくれるだけで、家族みんな幸せでした。

    何年も前のことですが、長女が私に言ってきたことがあります。

    「子ども3人もいたら大変だよね、ひとりのほうがよかったことない?」

    私は、それはそういう問題じゃない、大変じゃないことと、幸せな事はリンクしないと言った。
    チロルだって、いなかったらお世話もしなくて良いしお金もかからないけど、チロルがいるから、みんな幸せだよね?と話しました。

    それはわかると言ってくれたので、そういう気持ちをわかってもらえただけでも、チロルがいてよかったと思います。

    チロルは何も生産性の高いことをするわけでないけど、チロルがいるだけでみんな幸せ。

    親が子どもたちに対して思ってることだって、同じなのです。
    子どもたちが健康で楽しく生きてくれていたら、それだけで私も旦那さんも幸せ、あなたたちが存在してくれているだけで嬉しい。

    そう思っている事を少しでも、子どもたちが分かってくれたなら、ありがたいと思いました。

    チロたん、寂しいよ。
    8年間ほんとうにありがとう。